もうそっちのけで、どうすれば一等になれるかを考え、そのうち大きくうなずき、授業が終わると一目散で家へ帰り、物置から捕虫網を探し出すと、ゴミ山へと小走りで向かった。そして封筒が膨らむほど捕った。そして、翌朝「神様、どうか、僕を一等にしてください」と念じつつ、木箱にそっと入れた。

二週間後、こいしは賞状と副賞の「コーリン鉛筆」半ダースを手にし、喜び勇んで、頼まれた着物を縫う、母に報告した。

「なんだって? ハイ(※何故か、母はハイと言う)捕りコンクールで一等? で、何匹だったの?」

「秤(はかり)で計ったみたいで、何匹かは分かんない。ばっちゃん先生が『瀬淵君(※こいしの苗字)のお家、いっぱい飛んでて良かったね』って言った」

「冗談じゃない、見てみな、一匹だっていやしない! で、どこで捕った?!」

「ゴミ山」

「ゴミ山だって? 母ちゃんはPTAの役員だよ、それも書記。その家がハイや蛆(うじ)が、うじゃうじゃいるなんて思われたら心外だ。

直ぐ学校へ行って、ゴミ山で捕ったと言ってきな。そう言わなきゃ、父兄の誰だって、先生の言うとおりだと思うだろ! 恥ずかしくって顔向けできない! さあ、早く、行って行って! いやなら、晩御飯、なしだ!」

鬼の形相で言い、鯨尺(竹製の和裁用物差し)を、振り上げた。

母の怒りには慣れっこなので、ほとぼりが冷めるまで、幼馴染の「まーちゃん」の家で時を過ごしていた。